私達はこの春結婚した。夫はいわゆる草食系男子で、優しいけれども頼りないところがある。まあ、それでも夫の会社は安定しているし、給料もそれなりにもらえるし、きっと凪いだ海のような穏やかな結婚生活が送れるのだろうと思っていた。

ところが新居であるマンションに引っ越して早々、問題が起きた。引っ越してまだ3日、やっと段ボールの山が無くなりかけた頃に、洗面所の天井からポタポタと水が垂れているのに気付いた。ぎょっとなった私は夫に助けを求めた。「もしかして、上の人の家で水漏れが起きているのかも…」上の人に文句を言いに行くなり、管理人さんにクレームを入れるなりにしても、私はできれば夫に動いてほしかった。ところが夫は「うーん、どうだろうねぇ」と歯切れの悪い返事をしたまま一向に動こうとはしない。そこで私は夫に「ちょっと、言ってきてくれない？」とお願いした。すると夫は心底意味が分からないという感じで、「え、どうして僕が？」ときょとんとしている。え、どうして僕が、じゃねーだろ。この家の主はおめーだろうが。と言いたいのを我慢し、私は管理人室に駆け込んだ。事情を説明するとすぐに管理人さんが上の階に確かめに行ってくれた。案の定上の階の洗面所から水漏れしていて、我が家にも水が漏れてきているということだった。管理人さんもてきぱきと動いてくれて、上階の人は菓子折りを持って謝りに来てくれて、一件落着、のはずなのに、何だか私の心は悶悶としていた。「ねぇ、どうして動いてくれなかったの？」少しきつい口調で私は夫に問いただした。すると夫は「だってもし上の人が逆ギレでもしたらさあ…怖いじゃん」と信じられない言葉を口にした。はあ？私が逆ギレされるのは構わないってーの？私はそのとき初めて、この結婚に対する疑問を抱いたのだった。

引っ越し早々水漏れ発見で、色々な意味で先が思いやられる…私はふかーくため息をついたのだった。